読書

司馬遼太郎「尻啖え孫市」

(角川文庫) はっきり言って天下国家を語りたがる時の司馬遼は大の苦手ですが、こういう飄々とした人を喰ったようなヒーローを書かせると、やはり巧いです。暇つぶしのつもりで読んでいたら、いつの間にか600ページ以上のボリュームを一気に読んでしまっ…

ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」€

(講談社アフタヌーンKC) 最近評判になっている高校野球漫画。んで遅ればせながら読んでみました。本当はスポーツものはあんまり得意ではないんだけど。 主人公のピッチャーが卑屈で自虐的でコンプレックスの固まりの泣き虫さん、という設定が新鮮で良い…

荻原規子「樹上のゆりかご」

(理論社) 古代日本を舞台にした「勾玉」三部作や架空世界が舞台の「西の善き魔女」シリーズなどで知られる日本のファンタジーの第一人者の、これはちょっと珍しい現代物学園ミステリー。ただし私はミステリーの良い読者ではないので、ミステリーとしての出…

吾妻ひでお「失踪日記」

(イーストプレス) 「不条理日記」「やけくそ天使」の漫画家・吾妻ひでおさんが、スランプに陥ってホームレス生活を送ったり、その後アルコール中毒になって入院したり、と言った顛末を赤裸々につづったエッセイマンガ。 #そういえばこの直前位の吾妻さん…

もえるるぶ東京案内 

(JTBパブリッシング) 「萌え」観点から見た新東京観光案内、という着想は良いと思うんですがね。 まず何よりも、「もえるるぶ」を名乗っておきながら、版型があの「るるぶ」版型じゃない!これが問題その一! わずか125ページしかない本なのに、その…

トーマス・M・ディッシュ「アジアの岸辺」

(若島正 編 国書刊行会「未来の文学」シリーズ) いやあ、暗いです。この間の「SFファングループ連合会議懇親会」でも話が出ていましたが、読後感イヤな話ばっかりです。特に「話にならない男」とかは、話し下手で人前で間が保てない自分としては誠に身につ…

紺野キタ「知る辺の道」

(幻冬舎コミックス) 隠れたファンの多い「ひみつの階段」シリーズの紺野キタさんの最新短編集。どちらかというとややホラーよりのファンタジーばかりを集めてあります。とは言っても紺野さんの事なので、決してドロドロ暗い話にはならずに、いつもの品の良…

テリー・ビッスン(中村融 編訳)「ふたりジャネット」

(河出書房新社 奇想コレクション) まとめて読むのは初めてだったけど、いやあ面白いわこの人。 どの短編も、話の核になるのは「熊たちが『火』を発見する」とか、「イングランドがある日突然大西洋へ航行し始める」とか、「アメリカの田舎町にサリンジャー…

江戸三○○藩 バカ殿と名君(光文社新書) 

とにかくそんな興味もあって読んだのがこの本。全国300もの大小の藩それぞれの「お家の事情」と、それに必死に取り組み、あるいは挫折し、あるいは投げ出しちゃった殿様達の人間模様を事細かに調べて伝えてくれます。 全体として、通俗史のいわゆる「名君…