トーマス・M・ディッシュ「アジアの岸辺」

若島正 編 国書刊行会未来の文学」シリーズ)
 いやあ、暗いです。この間の「SFファングループ連合会議懇親会」でも話が出ていましたが、読後感イヤな話ばっかりです。特に「話にならない男」とかは、話し下手で人前で間が保てない自分としては誠に身につまされてイヤです。あと1973年発表の「国旗掲揚」とかは、むしろ今のアメリカにこそ似合っているんじゃないか、と思ったり。でもその暗さと意地の悪さが妙な魅力だったりもします。
 ディッシュを「いさましいちびのトースター」でしか知らない人が読んだら、違和感有るだろうなあ。
 一番面白かったのは表題作の「アジアの岸辺」。この描写を読んでいたら、自分も何となくイスタンブールに住み着いて主人公みたいにやさぐれた生活をしてみたくなったり・・・。「イスタンブールのキリング」ってどんな映画だか見てみたいなあ。
 ああ、このシリーズ、まだイアン・ワトソンの「エンベディング」がつん読になっているんだよなあ。早くしないと次の巻が出ちゃうぞ。