吾妻ひでお「失踪日記」

イーストプレス
 「不条理日記」「やけくそ天使」の漫画家・吾妻ひでおさんが、スランプに陥ってホームレス生活を送ったり、その後アルコール中毒になって入院したり、と言った顛末を赤裸々につづったエッセイマンガ。
#そういえばこの直前位の吾妻さんの漫画はやたら暗かったな・・・。
 ところがこれが無類に面白い。巻末の対談でとりみきさんが指摘しているとおり、吾妻さん本人が自分の体験を妙に私小説化せずに、対象化・客観化して書いてくれているせいでしょう。野鳥用の罠の餌を盗み食いし、腐ったリンゴの発酵熱で手を暖めて生き抜く吾妻さんの姿がたくましい。そういえばバブル真っ盛りの頃、カミさんと「将来は二人で新宿西口でホームレスして余生を過ごそうな」と誓い合ったのを思い出します。

追記:浮浪生活をしていた吾妻さんが不審尋問を受けて警察署に連れて行かれところ、吾妻ファンの刑事がいて、色紙にサインをねだられた、というエピソードには笑ってしまいました。